2010年3月27日土曜日

多国籍サッカーでみるチームワークの重要性

この学校に入学してからこっち、毎週一回のペースでMBAの学生たちと一緒にサッカーをしています。サッカーといっても7対7くらいで、ミニコートでのサッカーです。このMBAサッカーの特筆すべき点は、参加者のほとんど全員の国籍が重なっていないということです。この多国籍環境では、なぜかチームワークを尊重しなければいけないという共通理解が、徐々に醸造されていきました。サッカーを通じても、突出したエゴよりも高いチームワークが生産性を向上させるのだと、参加者のそれぞれが認識しているようです。

VlerickMBAサッカーに参加している学生は、スロベニア、マケドニア、ハンガリー、ポーランドといった東欧諸国や、ベルギー、ドイツ、フランス、オランダ、アイスランド、ギリシアといった西欧諸国、アルゼンチン、チリ、アメリカ合衆国といったアメリカの国々、ヨルダン、インド、中国、日本、インドネシアといったアジア諸国を出身としています。

このサッカーをやりはじめた昨年秋ごろでは、マケドニア、ハンガリー、ヨルダンの学生などが特に強烈な自我を発揮して、個人プレーに終始する傾向が強かった。ところが最近になると、こういったエゴセントリックな学生たちも、だんだんとチームプレー重視のおだやかなプレースタイルに変化してきています。

また、我々のサッカーでは、サッカーコートでVlerickMBAとは無関係の人たちも飛び入りでプレーに参加しています。この飛び入りの人たちは割りと曲者で、かなり個人的プレーに走り勝ち、ともすると、同じチーム内で喧嘩をしだす輩なども混じっています。特に、最近では、アラブ系の飛び入り参加者がやたらとヒートアップし、同じチームのプレーヤーに野次を飛ばしたり、相手チームのプレーヤーに喧嘩を吹っかけたりと、トラブルをどんどん築いていき、最後にはふてりくさって、チームを途中で抜けて行ったりしています。また、南米系の飛び入り参加者もこちらのヨルダン人といさかいを起こし、ゲーム中に口論になる場面なども。

MBAの学生同士のいさかいはこれまで一度もないのですが、部外者とのいさかいはこのようにしばしば発生しています。また、部外者といさかいになるMBAの学生はギリシャ人・ヨルダン人など比較的熱い性格を持った連中である傾向が強いです。ふだんはおとなしくチームプレーに徹していても、問題が発生すると、血が燃えてヒートアップするようです。

一方、オランダ人などはクライフのトータルフットボールの影響を色濃く受けるのか、チームワーク・パスサッカー重視で、仮に点数が入らなくとも、「パスをつなげることこそに価値がある」と自身のサッカー哲学をチーム内に啓蒙しています。また、シュートが外れたりおかしなちょんぼを他のプレイヤーがしてもすかさず「アンラッキー!!」と大声でフォローを入れるなど、仲間の心理状況に対するケアも欠かしません。

僕が見ている限り、日本人は多くの場合、パスサッカーに徹する傾向があります。また、ポジショニングなどにも繊細な心配りをするのが日本人の傾向です。エゴが少なく、チームプレーでの最終的な結果に最大の価値を見出しているというわけです。

僕がモスクワ・サハリンなどで見ていたロシア人は、日本人よりはエゴが強いですが、実は相当システマチックに、チームプレーを目指すという傾向があります。

一方、南米の人たちは(今回MBAで一緒にやっているアルゼンチン人は例外ですが)、個人技大好きで、実際身体能力も高く、進んで一人で状況を打開し、恐ろしく激しい熱意でサッカーに当たっている人が多かったりします。

このように、出身国によって、サッカー哲学やそもそもの人間性に大きな隔たりがあるものなのですが、 そういった人たちがまとめて集まってチームを作ると、最終的にはひどくチームワーク重視のパスサッカーになり、お互いに強い要求を出さず、相手を叱責することもなくなるというのは面白い現象です。これは恐らく単純に、和をもって尊しとするの精神が、多国籍軍ではもっとも生産的だということを示しているように思われます。